第219話 原爆忌・昭和二十年生まれなり(13.09.01)
第218話 『人間の秘密』はつらい夜を過ごすために(13.08.08)
第217話 逢魔が時は夕方とは限らない(13.07.08)
第216話 花や鳥や風や月は謳い、では人は何を詠うのか(13.06.04)
第215話 『最後のニュース』のあなたとあなたとあなた(13.05.04)
第214話 西行に倣い、桜に葬られて(13.04.04)
第213話 『BEETLE』は止まり場を求めて(13.03.04)
第212話 2008年は「春のめざめ」だった(13.02.18)
第211話 『音戸の舟歌』で巳年を迎える(13.01.08)
第210話 歳末に<引かれもん小唄>を歌いたくはないが。(12.12.12)
第209話 『平家物語』の舞台は東北だった(12.11.12)
第208話 “宮さん、宮さん”を今さら歌えといわれても(12.10.12)
第207話 『朗読とジャズのシモキタ・ジャンクション』の馴れ初め(12.9.12)
第206話 今年の『シモキタヴォイス』も始まりは2007年だった(12.8.8)
第205話 昭和の歌『月がとっても青いから』>(12.7.8)
第204話 雨中行軍する<ライカで下北沢>(12.6.8)
第203話 「ザ・クレードル」のまぼろしを巡りながら(12.5.10)
第202話 『SONG NEVER SANG』を、今一度響かせたい(12.4.12)
第201話 人間の第七官に響くやうな詩を書いてやりませう。(12.3.27)
第200話 しみったれたノスタルジーから『あゆむ街』へ=『ウイ・インシスト!』(12.2.20)
第199話 瀬戸内に揺れる<邯鄲の夢>か『音戸の舟歌』(12.1.19)
第198話 蠅男は『紙風船』と朝日の中に昇天する(11.12.16)
第197話 キジムナ又はラッコと『あのころ』(11.11.16)
第196話 あの夜が今よみがえる『YUSAKU MUSIC NOTE』(11.10.12)
第195話 人の縁も軽口も、人生は『ブーメランのように』(11.9.9)
第194話 敗北した時は『見上げてごらん夜の星を』(11.8.10)
第193話 東京でいつか観た<ナシ族歌舞>と<東巴文字>(11.7.19)
第192話 『想いの届く日』をレコーディングしていた頃(11.6.10)
第191話 巨人の『怪談・牡丹灯籠』を下北沢で続ける(11.5.11)
第190話 『原爆許すまじ』の歌、歌えますか?(11.3.30)
第189話 聞こえるや、『十九の春』のうめき声。(11.3.30)
第188話 『般若心経』をゴラン高原に響かせてみたい(11.1.10)
第187話 満月を盃にくだきて、暫し、酔ひて勢えよ(11.1.10)
第186話 『ふるさと 』の青森に<木鶏>を尋ねる(10.12.3)
第185話 『言うなかれ、君よ、別れを』と言って、人は逝くのか(10.11.15)
第184話 <ヴァーチカル・ドラム>にシモキタが一ミリ動いた。(10.10.3)
第183話 あの頃『アムトラック・ブルース』が流れていたよ。(10.9.3)
第182話 「無悟」と「無垢」の違いが判らない。(10.8.3)
第181話 『夜のカフカ』のシナップス(10.7.3)
第180話 魑魅魍魎を哲学すると(10.5.15)
第179話 FLANEUR(ブラブラ歩き)は止まらない(10.4.30)
第178話 チンドン音楽の出番ですよ(10.4.12)
第177話 小判で面張る今様下北沢(10.3.5)
第176話 『茶々&ちび〜三角橋の猫の歌』流れる街をどうしようと?(10.2.10)
第175話 シューベルトの『あすなろ』を歌えと言われてみても(09.12.25)
第174話 日本人の笑顔と風のインプロビゼーション(09.12.25)
第173話 「世界はときどき美しい」と思いたい。 (09.10.6)
第172話 『雨が空から降れば』しょうがない不条理 (09.9.3)
第171話 『浅い眠り』の街下北沢にて候。(09.8.12)
第170話 『ラストワルツ』を踊り続けたいのだけれど(09.7.3)
第169話 「上海帰りのリル」はピカレスクの匂い(09.6.5)
第168話 『明日という字は明るい日と書く』のですか?(09.5.7)
第167話 「ヤマテピアノ」は旅の空を飛ぶ(09.4.3)
第166話 ジャンゴを聞きながら大分を巡る(09.3.7)
第165話 大川に紅涙流れて(09.1.30)
第164話 あなごは旨いが、逃した「明日の神話」はでかい(09.1.13)
第163話 『恨五百年』の音を幻聴する(08.12.4)
第162話 『椿姫・前奏曲』は春の訪れ悲恋の訪れ (08.11.10)
第161話 水の惑星で聞きたかった『セイレーン』の歌 (08.10.8)
第160話 『シネマアートン下北沢』の鳴動 (08.9.9)
第159話 三千世界の鴉を殺し 主と朝寝がしてみたい (08.8.1)
第158話 『いつかギラギラする日』にラスト・ダンスを (08.7.8)
第157話 今様『梁塵秘抄』に戯れて (08.5.2)
第156話 シモキタに江戸前の風が未だ吹いている。 (08.4.4)
第155話 『如露亦如雷』の響、海峡を渡る。 (08.3.1)
第154話 街のすきま風をジャズが塞いだ時代があった (08.2.8)
第153話 英哲の『若沖』で年は越してはみたが (07.12.28)
第152話 『さくらんぼの実る頃』は愛の悲しみ (07.12.11)
第151話 下北沢に『不死身の花』が咲くころ (07.11.05)
第150話 映画よ あれがシモキタの灯だ (07.10.15)
第149話 「ロンリー・ウーマン」はトリガーに指を掛けた (07.09.04)
第148話 P.グラスの鉱物的ミニマル交感 (07.08.03)
第147話 今から『風をあつめて』おくために (07.07.03)
第146話 『MASAЯA SCOPE』は土空火水を駆ける (07.06.02)
第145話 『ゲンズブール委員会』への招待状 (07.05.08)
第144話 CAVA BIEN?『MASARA』 (07.04.05)
第143話 ボリス・ヴィアン気取りの『北京の秋』から始まる (07.03.08)
第142話 〈美しい国〉から『七福神の歌』が聞こえる (07.02.01)
第141話 『井戸の茶碗』なる地縁血縁 (07.01.05)
第140話 歌っとくれよ「ゴンドラの唄」を (06.12.05)
第139話 正調『満月の夕』が浸みた。 (06.11.01)
第138話 沖縄―アイヌを結ぶ『シンクロニシティ』 (06.10.10)
第137話 『八月の種』の種撒き唄を歌って (06.08.31)
第136話 「檸檬」と『セントジェームス病院』と (06.08.02)
第135話 『諷誦文』の唱導をいつか聴く日 (06.07.13)
第134話 K・D・ラングの『カウガール・ブルース』 (06.06.15)
第133話 『国境の南』ーバハカリフォルニア (06.05.16)
第132話 朝日の中 下北『かもめ』は翔ぶ (06.04.13)
第131話 伝播する『花心』の基礎体温 (06.03.09)
第130話 『吾唯知足』の教えに行雲流水する (06.02.01)
第129話 新年を繋ぐ交感神経作用 (06.01.06)
第128話 『アルフェンティーナ』の月ヶ瀬幻視行 (05.12.05)
第127話 ミドリブタと歩く街流れる歌 (05.11.02)
第126話 昭和を記憶する『夢であいましょう』 (05.10.01)
第125話 『禁断の果実』を求めてジャズの茨の道へ (05.09.06)
第124話 色即是空と『グラナダ』食い合わせ (05.09.06)
第123話 『ラプソディ・イン・ブルー』の不意打ち、『草原情歌』の余韻 (05.07.05)
第122話 『何日君再来』を君と聴く日 (05.06.03)
第121話 『般若心経』を教科書で読む日 (05.05.10)
第120話 下北ノイズの生まれる街で (05.04.01)
第119話 『ホエン・アイ・ワズ・ヤング』は今歌えない (05.03.04)
第118話 ヴェトナム人が見る『ジョージア』の夢 (05.02.01)
第117話 『ゴジラ』の年からヒロシマの年へ (05.01.01)
過去コンテンツも徐々に掲載します。


大木雄高 おおきゆたか
1945年生まれ。大学時代から小劇団を組織し、60〜70年代の同時代演劇を、作・演出・役者として手がける。78年以降は定期ライブのほか、「下北沢音楽祭」、「松田優作追悼コンサート」等をプロデュース。下北沢"LADY JANE"オーナー。"音曲祝祭行"は"音曲祝祭考"としてアサヒグラフ誌に98年1月から6月まで計24回を連載していたものを、連載終了を期に装いも新たに自主制作版とWEB版で復活させたもの。



 

"音曲祝祭行"は下北沢"LADY JANE"にて月1回部数限定で発行しています。
 
 今年の8月6日は広島にいた。前日の5日に、ノールウエーからやって来た40人の聖歌隊、男女の舞踏家、数人の楽士、作曲&指揮者に依る「PICADON-MUSIC DANCE&FILM」が、おおたか静流&エイジアン・ウイングスと合体したコンサート「風に吹かれて」があったからだ。オープニングはアニメ『ピカドン』から始まった。1979年に木下蓮三監督が撮った68年前の8月6日午前8時15分前後を描いた十分の短編は、未だにDVDが発行されてなくて、ノールウエーの「ピカドン」チームから逆輸入されて上映されるという、日本の文化の構図がここにもあった。
 翌朝8時15分、一分間の黙祷は広島人ならだれもが68回やってきた。前夜の疲れもあって、昼寝から目をさますと午後3時頃だった。ホテルの部屋のテレビをつけて地元局のRCCにチャンネルを合わせると、バラエティ報道番組が実況中継をやっていて、観ると大樹の側でマイクに向っているのは知り合いの広島人だった。樹の根元がまっ二つに割れているにも関わらず、多くの太い枝を持った巨大な<被爆クスノキ>のいわく因縁を彼女が喋っていた。爆心地から数百メートルの近くにある白神社の楠のことは、同じ広島人でも俺は全く知らなかった。非営利法人NPO「アント・ヒロシマ」の渡部朋子は、前夜の「ピカドン」チームの上演にも協力をお願いしていて、会ったばかりだった。急に部屋にいることに後ろめたさを感じてそそくさとホテルを出た。
 表は異常な熱さで忽ち汗が噴き出した。恐るべし広島の夕凪、だが自然と足は平和公園の方へと向いた。平和公園では裕に百を越える催しがひしめきあっている。何人かの顔見知りにバッタリと会う。原爆ドームを挟んだ元安川畔で例年音楽イベントを仕掛けている、NPO法人の山根進と久し振りの挨拶をしていると、東京からやって来た出演者が俺を見て吃驚して寄ってくる。又ぐるりと回ってやや川上に来た時、「大木さん!」と声をかけられた。昨夜と午後のテレビの渡部朋子だった。見ると川を背に壇が儲けられ、テーブル、マイク、撮影カメラが設置されていた。「何ね?」と俺。「今からNHKの生中継なんよ。こちら川崎さん」と隣りの人を紹介されると、NGOピースボートと核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の共同代表を務める川崎哲だった。10分後に始まる生番組の録画を誰か録れないかと思い、「じゃあ又ね」と言おうとした時、三人目のコメンテーターがやって来た。オリバー・ストーン監督ではないか。ジュネーブ国連本部の核不拡散条約(NPT)の会合で、日本は「核の非人道性に関する共同声明に署名しなかった」が、川崎哲はそれらを突く。実際、被爆国日本は世界の笑い者だろう。原爆認識を改めたオリバー・ストーンがヒロシマを熱く語り、「1945年8月6日、僕はヒロシマに生まれた」とまで言った。被爆二世の渡部朋子は「はだしのゲン」を語った。去年の12月25日癌で亡くなった中沢啓治の、自身の被爆体験を下敷きにした漫画「はだしのゲン」は、既に何カ国語にも翻訳されているが、英語版がこの日に出版された。オリバー・ストーンに是非送ろうよ。渡部朋子は中沢啓治のドキュメンタリー映画『はだしのゲンが見たヒロシマ』(2011)を撮っているのだ。早々に現場を離れた俺は平和公園の入り口、川が分岐する三点を結ぶ相生橋から川を眺める。十八時半、既に灯籠流しが始まりかけていたが、
海に近いここは引き潮にならないと
灯籠が綺麗に川下に流れていかない。
灯籠はただ漂っていた。

 友人の割烹のカウンターで思い出す。8月六6日は2008年以来だった。ある企画した映画の舞台の一部が広島だった。俺は監督の廣木隆一に灯籠流しを先撮りしておこうと進言してやって来た。八月六日を逃すと一年先でしか灯籠流しのシーンは撮れないからだった。広島フィルムコミッションとRCCの協力の下、人気アナウンサー横山雄二の追っかけたちを振り払いながらの撮影だった。闇が来て色とりどりの灯りの灯籠が流れ出すのは引き潮の八時頃から。太陽は沈んでも恐るべし夕凪の熱帯夜のなか、見事な灯籠流しを収めたのだ。
 翌2009年の広島である出会いがあった。渡部朋子と俺が初対面した時、こよりを合わせると何と原爆被爆が切り結んだ義妹だったのだ。戦後64年の3月25日のことだった。
ピカドンから逃げられない。
灯籠流しのフィルムは
いまだ眠ったままだ。いつ起こす?

 

 
 




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