第222話 『浜辺のソプラノ』も昭和歌謡山脈の夢の途中(13.12.01)
第221話 『花巻農学校精神歌』と『ヨイトマケの歌』を繋ぐ知恵の輪(13.11.01)
第220話 <時代>に生きてしまったら、もう変われない。(13.10.01)
第219話 原爆忌・昭和二十年生まれなり(13.09.01)
第218話 『人間の秘密』はつらい夜を過ごすために(13.08.08)
第217話 逢魔が時は夕方とは限らない(13.07.08)
第216話 花や鳥や風や月は謳い、では人は何を詠うのか(13.06.04)
第215話 『最後のニュース』のあなたとあなたとあなた(13.05.04)
第214話 西行に倣い、桜に葬られて(13.04.04)
第213話 『BEETLE』は止まり場を求めて(13.03.04)
第212話 2008年は「春のめざめ」だった(13.02.18)
第211話 『音戸の舟歌』で巳年を迎える(13.01.08)
第210話 歳末に<引かれもん小唄>を歌いたくはないが。(12.12.12)
第209話 『平家物語』の舞台は東北だった(12.11.12)
第208話 “宮さん、宮さん”を今さら歌えといわれても(12.10.12)
第207話 『朗読とジャズのシモキタ・ジャンクション』の馴れ初め(12.9.12)
第206話 今年の『シモキタヴォイス』も始まりは2007年だった(12.8.8)
第205話 昭和の歌『月がとっても青いから』>(12.7.8)
第204話 雨中行軍する<ライカで下北沢>(12.6.8)
第203話 「ザ・クレードル」のまぼろしを巡りながら(12.5.10)
第202話 『SONG NEVER SANG』を、今一度響かせたい(12.4.12)
第201話 人間の第七官に響くやうな詩を書いてやりませう。(12.3.27)
第200話 しみったれたノスタルジーから『あゆむ街』へ=『ウイ・インシスト!』(12.2.20)
第199話 瀬戸内に揺れる<邯鄲の夢>か『音戸の舟歌』(12.1.19)
第198話 蠅男は『紙風船』と朝日の中に昇天する(11.12.16)
第197話 キジムナ又はラッコと『あのころ』(11.11.16)
第196話 あの夜が今よみがえる『YUSAKU MUSIC NOTE』(11.10.12)
第195話 人の縁も軽口も、人生は『ブーメランのように』(11.9.9)
第194話 敗北した時は『見上げてごらん夜の星を』(11.8.10)
第193話 東京でいつか観た<ナシ族歌舞>と<東巴文字>(11.7.19)
第192話 『想いの届く日』をレコーディングしていた頃(11.6.10)
第191話 巨人の『怪談・牡丹灯籠』を下北沢で続ける(11.5.11)
第190話 『原爆許すまじ』の歌、歌えますか?(11.3.30)
第189話 聞こえるや、『十九の春』のうめき声。(11.3.30)
第188話 『般若心経』をゴラン高原に響かせてみたい(11.1.10)
第187話 満月を盃にくだきて、暫し、酔ひて勢えよ(11.1.10)
第186話 『ふるさと 』の青森に<木鶏>を尋ねる(10.12.3)
第185話 『言うなかれ、君よ、別れを』と言って、人は逝くのか(10.11.15)
第184話 <ヴァーチカル・ドラム>にシモキタが一ミリ動いた。(10.10.3)
第183話 あの頃『アムトラック・ブルース』が流れていたよ。(10.9.3)
第182話 「無悟」と「無垢」の違いが判らない。(10.8.3)
第181話 『夜のカフカ』のシナップス(10.7.3)
第180話 魑魅魍魎を哲学すると(10.5.15)
第179話 FLANEUR(ブラブラ歩き)は止まらない(10.4.30)
第178話 チンドン音楽の出番ですよ(10.4.12)
第177話 小判で面張る今様下北沢(10.3.5)
第176話 『茶々&ちび〜三角橋の猫の歌』流れる街をどうしようと?(10.2.10)
第175話 シューベルトの『あすなろ』を歌えと言われてみても(09.12.25)
第174話 日本人の笑顔と風のインプロビゼーション(09.12.25)
第173話 「世界はときどき美しい」と思いたい。 (09.10.6)
第172話 『雨が空から降れば』しょうがない不条理 (09.9.3)
第171話 『浅い眠り』の街下北沢にて候。(09.8.12)
第170話 『ラストワルツ』を踊り続けたいのだけれど(09.7.3)
第169話 「上海帰りのリル」はピカレスクの匂い(09.6.5)
第168話 『明日という字は明るい日と書く』のですか?(09.5.7)
第167話 「ヤマテピアノ」は旅の空を飛ぶ(09.4.3)
第166話 ジャンゴを聞きながら大分を巡る(09.3.7)
第165話 大川に紅涙流れて(09.1.30)
第164話 あなごは旨いが、逃した「明日の神話」はでかい(09.1.13)
第163話 『恨五百年』の音を幻聴する(08.12.4)
第162話 『椿姫・前奏曲』は春の訪れ悲恋の訪れ (08.11.10)
第161話 水の惑星で聞きたかった『セイレーン』の歌 (08.10.8)
第160話 『シネマアートン下北沢』の鳴動 (08.9.9)
第159話 三千世界の鴉を殺し 主と朝寝がしてみたい (08.8.1)
第158話 『いつかギラギラする日』にラスト・ダンスを (08.7.8)
第157話 今様『梁塵秘抄』に戯れて (08.5.2)
第156話 シモキタに江戸前の風が未だ吹いている。 (08.4.4)
第155話 『如露亦如雷』の響、海峡を渡る。 (08.3.1)
第154話 街のすきま風をジャズが塞いだ時代があった (08.2.8)
第153話 英哲の『若沖』で年は越してはみたが (07.12.28)
第152話 『さくらんぼの実る頃』は愛の悲しみ (07.12.11)
第151話 下北沢に『不死身の花』が咲くころ (07.11.05)
第150話 映画よ あれがシモキタの灯だ (07.10.15)
第149話 「ロンリー・ウーマン」はトリガーに指を掛けた (07.09.04)
第148話 P.グラスの鉱物的ミニマル交感 (07.08.03)
第147話 今から『風をあつめて』おくために (07.07.03)
第146話 『MASAЯA SCOPE』は土空火水を駆ける (07.06.02)
第145話 『ゲンズブール委員会』への招待状 (07.05.08)
第144話 CAVA BIEN?『MASARA』 (07.04.05)
第143話 ボリス・ヴィアン気取りの『北京の秋』から始まる (07.03.08)
第142話 〈美しい国〉から『七福神の歌』が聞こえる (07.02.01)
第141話 『井戸の茶碗』なる地縁血縁 (07.01.05)
第140話 歌っとくれよ「ゴンドラの唄」を (06.12.05)
第139話 正調『満月の夕』が浸みた。 (06.11.01)
第138話 沖縄―アイヌを結ぶ『シンクロニシティ』 (06.10.10)
第137話 『八月の種』の種撒き唄を歌って (06.08.31)
第136話 「檸檬」と『セントジェームス病院』と (06.08.02)
第135話 『諷誦文』の唱導をいつか聴く日 (06.07.13)
第134話 K・D・ラングの『カウガール・ブルース』 (06.06.15)
第133話 『国境の南』ーバハカリフォルニア (06.05.16)
第132話 朝日の中 下北『かもめ』は翔ぶ (06.04.13)
第131話 伝播する『花心』の基礎体温 (06.03.09)
第130話 『吾唯知足』の教えに行雲流水する (06.02.01)
第129話 新年を繋ぐ交感神経作用 (06.01.06)
第128話 『アルフェンティーナ』の月ヶ瀬幻視行 (05.12.05)
第127話 ミドリブタと歩く街流れる歌 (05.11.02)
第126話 昭和を記憶する『夢であいましょう』 (05.10.01)
第125話 『禁断の果実』を求めてジャズの茨の道へ (05.09.06)
第124話 色即是空と『グラナダ』食い合わせ (05.09.06)
第123話 『ラプソディ・イン・ブルー』の不意打ち、『草原情歌』の余韻 (05.07.05)
第122話 『何日君再来』を君と聴く日 (05.06.03)
第121話 『般若心経』を教科書で読む日 (05.05.10)
第120話 下北ノイズの生まれる街で (05.04.01)
第119話 『ホエン・アイ・ワズ・ヤング』は今歌えない (05.03.04)
第118話 ヴェトナム人が見る『ジョージア』の夢 (05.02.01)
第117話 『ゴジラ』の年からヒロシマの年へ (05.01.01)
過去コンテンツも徐々に掲載します。


大木雄高 おおきゆたか
1945年生まれ。大学時代から小劇団を組織し、60〜70年代の同時代演劇を、作・演出・役者として手がける。78年以降は定期ライブのほか、「下北沢音楽祭」、「松田優作追悼コンサート」等をプロデュース。下北沢"LADY JANE"オーナー。"音曲祝祭行"は"音曲祝祭考"としてアサヒグラフ誌に98年1月から6月まで計24回を連載していたものを、連載終了を期に装いも新たに自主制作版とWEB版で復活させたもの。



 

"音曲祝祭行"は下北沢"LADY JANE"にて月1回部数限定で発行しています。
 
 11月15、16、17の三日間、シェークスピアと同時代人で、イギリス・ルネッサンス期の作曲家・リュート奏者だったジョン・ダウランドの生誕450年記念コンサートを終えた。ヨーロッパ古典の世界へよくも足を踏み入れたものだとその無謀さに呆れているが、そのきっかけを作ったのが、2009年の企画第一弾、1月28日にオリエンタルホテル広島でやった『和楽の贈り物』というソプラノ、リュート、ヴァイオリンのコンサートだった。
 その数日前の1月22日の昼間、リハーサルのために三人は「レディ・ジェーン」で顔合わせした。顔合わせだから互いに初対面ということだ。俺はヴァイオリンの太田惠資はよく知っていたけど、ソプラノの深川和美はほんの少し知っていた程度でリュートの高本一郎とは太田と共に初対面だったかも知れない。どうしてこういう取り合わせを企画したのだろうかと思い、記憶を取り戻そうとペンを置いて考え込んでしまった。すると、前年の2008年4月6日から11日までカルメン・マキ・ツアーをやった時、神戸の老舗ジャズ・カフェ「木馬」にライブで立ち寄らせてもらったからだと思い着いた。どうして「木馬」を選んだのかというと、メンバーのピアニスト・板橋文夫が知ってたからだ。行ったことはなくても俺も知っていた。深川和美が店の人だったからだ。どうして彼女を知ったのかというと、多分その三ヶ月前の1月13日、谷川賢作とイタリア古楽を謳うテナーの辻康介が「レディ・ジェーン」ライブをやった時、客でいて飛び入りで二、三曲歌ったことがあった。何故飛び入りしたかというと、深川和美は谷川賢作プロデュース・作曲で、中原中也や谷川俊太郎の詩を歌にした日本語歌曲集『浜辺のソプラノ』を出していたからだ。彼女は高本一郎と「うたたね」というタイトルからして脱力系のユニットを組んでいて、高本一郎を俺に紹介したからだった。
こんなややこしいどうでも良い話に
付いてくる読者もなかなかだと思うが、
ま、そうだったのだ。

 2008年4月9日、カルメン・マキ・ライブ終演後、深川和美と話し込んだ流れから「今度高本一郎とのライブをやろう」となって、演奏を終えたばかりの太田惠資も混ぜることにして実現したのが先の『和楽の贈り物』だった。リュートという楽器は王侯貴族の寝室に侍り、止ん事なき方たちが健やかに睡眠に入っていく導入音楽だったなどとも言われてもいる楽器が、他の楽器や音楽と混じるとどんなになるかは興味があった。それと、俺は外でやる企画に“ステップ・アクロス・ザ・ボーダー”という副題というか姿勢を持ち込んでいるので、越境自体がコンセプトになっていた。旅をゆく鼠が突然見知らぬ道を塞がれて猫を噛む例えもあるだろう
 ところで、先ほどから書いている「木馬」という店のことを素通りする訳にいかない。深川和美はその店のマドモワゼル或いはマダムで、店のマスターは人生を味わい尽くしたような小西武志というギャルソンだ。神戸のトアロードにあって、サンジェルマン・デ・プレの「レ・ドゥ・マーゴ」や「カフェ・ド・フロール」よりモンパルナスの「ラ・ロトンド」や「ディンゴ・バー」の匂いを漂わしているようだった。ジャズ・エイジをパリに持ち込んだフィッツジェラルドがヘミングウエイに会ったのも、パリの外国人の多くが
『移動祝祭日』の中を異邦人として漂ったのも、
ジャズとアブサンがマリアージュする
発狂の日々があったればこそなのだ。


そんな薄いパリの記憶を妄想させる「木馬」は、街が醸す佇まいと一体化して文人、映画人、音楽人を吸い寄せて、失われた時代=ローリング・トゥエンティズ以前からあるパリの店ほどではなくても、ダニエル・シュミットやアッバス・キアロスタミ、楊徳昌や李安、1972年にまだセカンド助監督だった相米慎二を俺に押し付けた小沼勝や、一九六五年の名作『幸福』を撮ったアニエス・バルダのサインが、壁にところ狭しとインテリアになってたりすると、いささか妬ましくもあるのだ。
 1977年に31歳の時作ったと本人が言う。すると29歳の1975年のわが店と店主の歳もほぼ同じということになる。東京の空からライバル視しつつ見守るしかない。
 などと郷愁していると、今12月1日19時、谷川賢作と店で待ち合わせ時間ではないか! 新年1月12日のための昭和歌謡の選曲しなくてはいけないのだ。忌々しい時間め。

 
 




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