第223話 蕎麦を巡る旅と『ハッシャ・バイ』(14.01.06)
第222話 『浜辺のソプラノ』も昭和歌謡山脈の夢の途中(13.12.01)
第221話 『花巻農学校精神歌』と『ヨイトマケの歌』を繋ぐ知恵の輪(13.11.01)
第220話 <時代>に生きてしまったら、もう変われない。(13.10.01)
第219話 原爆忌・昭和二十年生まれなり(13.09.01)
第218話 『人間の秘密』はつらい夜を過ごすために(13.08.08)
第217話 逢魔が時は夕方とは限らない(13.07.08)
第216話 花や鳥や風や月は謳い、では人は何を詠うのか(13.06.04)
第215話 『最後のニュース』のあなたとあなたとあなた(13.05.04)
第214話 西行に倣い、桜に葬られて(13.04.04)
第213話 『BEETLE』は止まり場を求めて(13.03.04)
第212話 2008年は「春のめざめ」だった(13.02.18)
第211話 『音戸の舟歌』で巳年を迎える(13.01.08)
第210話 歳末に<引かれもん小唄>を歌いたくはないが。(12.12.12)
第209話 『平家物語』の舞台は東北だった(12.11.12)
第208話 “宮さん、宮さん”を今さら歌えといわれても(12.10.12)
第207話 『朗読とジャズのシモキタ・ジャンクション』の馴れ初め(12.9.12)
第206話 今年の『シモキタヴォイス』も始まりは2007年だった(12.8.8)
第205話 昭和の歌『月がとっても青いから』>(12.7.8)
第204話 雨中行軍する<ライカで下北沢>(12.6.8)
第203話 「ザ・クレードル」のまぼろしを巡りながら(12.5.10)
第202話 『SONG NEVER SANG』を、今一度響かせたい(12.4.12)
第201話 人間の第七官に響くやうな詩を書いてやりませう。(12.3.27)
第200話 しみったれたノスタルジーから『あゆむ街』へ=『ウイ・インシスト!』(12.2.20)
第199話 瀬戸内に揺れる<邯鄲の夢>か『音戸の舟歌』(12.1.19)
第198話 蠅男は『紙風船』と朝日の中に昇天する(11.12.16)
第197話 キジムナ又はラッコと『あのころ』(11.11.16)
第196話 あの夜が今よみがえる『YUSAKU MUSIC NOTE』(11.10.12)
第195話 人の縁も軽口も、人生は『ブーメランのように』(11.9.9)
第194話 敗北した時は『見上げてごらん夜の星を』(11.8.10)
第193話 東京でいつか観た<ナシ族歌舞>と<東巴文字>(11.7.19)
第192話 『想いの届く日』をレコーディングしていた頃(11.6.10)
第191話 巨人の『怪談・牡丹灯籠』を下北沢で続ける(11.5.11)
第190話 『原爆許すまじ』の歌、歌えますか?(11.3.30)
第189話 聞こえるや、『十九の春』のうめき声。(11.3.30)
第188話 『般若心経』をゴラン高原に響かせてみたい(11.1.10)
第187話 満月を盃にくだきて、暫し、酔ひて勢えよ(11.1.10)
第186話 『ふるさと 』の青森に<木鶏>を尋ねる(10.12.3)
第185話 『言うなかれ、君よ、別れを』と言って、人は逝くのか(10.11.15)
第184話 <ヴァーチカル・ドラム>にシモキタが一ミリ動いた。(10.10.3)
第183話 あの頃『アムトラック・ブルース』が流れていたよ。(10.9.3)
第182話 「無悟」と「無垢」の違いが判らない。(10.8.3)
第181話 『夜のカフカ』のシナップス(10.7.3)
第180話 魑魅魍魎を哲学すると(10.5.15)
第179話 FLANEUR(ブラブラ歩き)は止まらない(10.4.30)
第178話 チンドン音楽の出番ですよ(10.4.12)
第177話 小判で面張る今様下北沢(10.3.5)
第176話 『茶々&ちび〜三角橋の猫の歌』流れる街をどうしようと?(10.2.10)
第175話 シューベルトの『あすなろ』を歌えと言われてみても(09.12.25)
第174話 日本人の笑顔と風のインプロビゼーション(09.12.25)
第173話 「世界はときどき美しい」と思いたい。 (09.10.6)
第172話 『雨が空から降れば』しょうがない不条理 (09.9.3)
第171話 『浅い眠り』の街下北沢にて候。(09.8.12)
第170話 『ラストワルツ』を踊り続けたいのだけれど(09.7.3)
第169話 「上海帰りのリル」はピカレスクの匂い(09.6.5)
第168話 『明日という字は明るい日と書く』のですか?(09.5.7)
第167話 「ヤマテピアノ」は旅の空を飛ぶ(09.4.3)
第166話 ジャンゴを聞きながら大分を巡る(09.3.7)
第165話 大川に紅涙流れて(09.1.30)
第164話 あなごは旨いが、逃した「明日の神話」はでかい(09.1.13)
第163話 『恨五百年』の音を幻聴する(08.12.4)
第162話 『椿姫・前奏曲』は春の訪れ悲恋の訪れ (08.11.10)
第161話 水の惑星で聞きたかった『セイレーン』の歌 (08.10.8)
第160話 『シネマアートン下北沢』の鳴動 (08.9.9)
第159話 三千世界の鴉を殺し 主と朝寝がしてみたい (08.8.1)
第158話 『いつかギラギラする日』にラスト・ダンスを (08.7.8)
第157話 今様『梁塵秘抄』に戯れて (08.5.2)
第156話 シモキタに江戸前の風が未だ吹いている。 (08.4.4)
第155話 『如露亦如雷』の響、海峡を渡る。 (08.3.1)
第154話 街のすきま風をジャズが塞いだ時代があった (08.2.8)
第153話 英哲の『若沖』で年は越してはみたが (07.12.28)
第152話 『さくらんぼの実る頃』は愛の悲しみ (07.12.11)
第151話 下北沢に『不死身の花』が咲くころ (07.11.05)
第150話 映画よ あれがシモキタの灯だ (07.10.15)
第149話 「ロンリー・ウーマン」はトリガーに指を掛けた (07.09.04)
第148話 P.グラスの鉱物的ミニマル交感 (07.08.03)
第147話 今から『風をあつめて』おくために (07.07.03)
第146話 『MASAЯA SCOPE』は土空火水を駆ける (07.06.02)
第145話 『ゲンズブール委員会』への招待状 (07.05.08)
第144話 CAVA BIEN?『MASARA』 (07.04.05)
第143話 ボリス・ヴィアン気取りの『北京の秋』から始まる (07.03.08)
第142話 〈美しい国〉から『七福神の歌』が聞こえる (07.02.01)
第141話 『井戸の茶碗』なる地縁血縁 (07.01.05)
第140話 歌っとくれよ「ゴンドラの唄」を (06.12.05)
第139話 正調『満月の夕』が浸みた。 (06.11.01)
第138話 沖縄―アイヌを結ぶ『シンクロニシティ』 (06.10.10)
第137話 『八月の種』の種撒き唄を歌って (06.08.31)
第136話 「檸檬」と『セントジェームス病院』と (06.08.02)
第135話 『諷誦文』の唱導をいつか聴く日 (06.07.13)
第134話 K・D・ラングの『カウガール・ブルース』 (06.06.15)
第133話 『国境の南』ーバハカリフォルニア (06.05.16)
第132話 朝日の中 下北『かもめ』は翔ぶ (06.04.13)
第131話 伝播する『花心』の基礎体温 (06.03.09)
第130話 『吾唯知足』の教えに行雲流水する (06.02.01)
第129話 新年を繋ぐ交感神経作用 (06.01.06)
第128話 『アルフェンティーナ』の月ヶ瀬幻視行 (05.12.05)
第127話 ミドリブタと歩く街流れる歌 (05.11.02)
第126話 昭和を記憶する『夢であいましょう』 (05.10.01)
第125話 『禁断の果実』を求めてジャズの茨の道へ (05.09.06)
第124話 色即是空と『グラナダ』食い合わせ (05.09.06)
第123話 『ラプソディ・イン・ブルー』の不意打ち、『草原情歌』の余韻 (05.07.05)
第122話 『何日君再来』を君と聴く日 (05.06.03)
第121話 『般若心経』を教科書で読む日 (05.05.10)
第120話 下北ノイズの生まれる街で (05.04.01)
第119話 『ホエン・アイ・ワズ・ヤング』は今歌えない (05.03.04)
第118話 ヴェトナム人が見る『ジョージア』の夢 (05.02.01)
第117話 『ゴジラ』の年からヒロシマの年へ (05.01.01)
過去コンテンツも徐々に掲載します。


大木雄高 おおきゆたか
1945年生まれ。大学時代から小劇団を組織し、60〜70年代の同時代演劇を、作・演出・役者として手がける。78年以降は定期ライブのほか、「下北沢音楽祭」、「松田優作追悼コンサート」等をプロデュース。下北沢"LADY JANE"オーナー。"音曲祝祭行"は"音曲祝祭考"としてアサヒグラフ誌に98年1月から6月まで計24回を連載していたものを、連載終了を期に装いも新たに自主制作版とWEB版で復活させたもの。



 

"音曲祝祭行"は下北沢"LADY JANE"にて月1回部数限定で発行しています。
 
 平成26年の新年が明けたが、祝う気持ちになれない。暦が一枚めくれただけじゃないかと思ってしまう。旧年の12月の政治攻勢は凄かった。<特定秘密保護法強行可決>した後も、新聞の一面見出しは<南スーダン韓国軍に一万発銃弾提供>、<安保のための膨張予算案>、<首相靖国参拝>と続いた翌日は<<靖国参拝―米が『失望』>したんだと。29日に瀬戸内寂聴とドナルド・キーンがTV対談した見出しは「日本は何処へ向うのか」だった。
安倍晋三という人は命がけなのだろうか?
本当だろうか?

 逆に感極まった話。12月21日はヴァイオリンの向島ゆり子とチェロの星衛を連れた、鈴木亜紀のピアノの弾き語りライブだった。後半に好きな小泉八雲の短編小説「草ひばり」を朗読して自作曲を歌った。草ひばりは一センチにも満たない小さなコオロギのこと。「いつも日が暮れると、此の微小な魂は目をさます。名状しがたい妙なる美しい音楽・・寺の鐘が夜明けの刻を告げる時、それはようやくやむのである・・幾千万もの同胞の、深い、おぼろげな記憶なのである。その時、その歌は恋をーそして死をもたらした」と。歌う草ひばりは飢えのために自分の足をも食い、恋の相手を得たら歌わなくなってしまい、死ぬのだ。あわれ、命がけの草ひばり、歌うためなら、演奏するためなら、演じるためなら、命を投げ出して死んでいった何と多くの人たちのいたことか。想わず熱いものが込み上げた。
 その五日前の12月16日、昼の12時に吉祥寺駅で待ち合わせをしていたところ、下北沢駅に行くと電車が不通になっていた。井の頭線の高井戸駅で投身自殺があったのだと後で知ったが、不幸なわが身と世を嘆いて死んだ人は、若かったのか、男か女か分からない。駅に問い合わせても教えてくれない。首相が法律をごり押しせずとも、この国の国民は「秘密保護法」を自ら遵守しているから気持ちが悪い。小田急で新宿に出て山手線に乗り換えて、池袋で又西武線に乗り換えて大泉学園駅に待ち合わせ場所を切り替えた。知る人ぞ知る名人・高橋邦弘の打つ蕎麦会に行く用事だった。気持ちをつんのめらせて案内人を待った。蕎麦会場は12、3分歩いた或る寺社だった。
 2006年8月6日、広島空港に降り立ったその足で、レンタカーを借りて北へ一時間、中国山地に向った。まさかと思われる山道を上がると雪花山房はあった。広島県山県郡豊平町(現北広島町長笹)。「達磨翁」を名のる高橋邦弘の根城は、蕎麦屋というよりも蕎麦道場のような作りだった。着いたのが11時40分頃で席に座れたが、直後の12時前になると、何処からこんな山中に現れたのかという人がたちまち行列を作って驚かせた。営業を土日の二日間しかやらないのは、蕎麦で過疎の村おこしをしていた豊平農民の熱い思いに請われてやって来た高橋邦弘は、他の日を蕎麦打ちの指導に当てるからだ。厚焼き玉子と蕎麦味噌をアテに吟醸酒を飲りながら待つと、多分茨城と北海道産のブレンドした蕎麦の実が、中国山系の軟水で打たれて、緑色をした蕎麦になって出てくる。至福の時間が流れる。同じ思いをした別の記憶がある。
 1990年代半ばに数年間、八ヶ岳山麓の富士見高原で、八月の終わり頃、数年に亘ってサーマー・フェスを個人で主催していたバカがいた。それは元新宿ピットインの店長だった皆がカイブツと呼ぶ龍野治徳のことだ。バカでも相当に重傷な見上げるバカだ。俺は毎年二日間その「パーティ・パーティ」と題したフェスの富士見高原にいた。その年を1995年としよう。妻と早めに家を出た。あずさ◯◯号に乗って長坂駅で降りると、友人が車で待っていた。小一時間くらい掛かっただろうか、「パーティ・パーティ」に行く前の昼時間、いきなり切り開かれた森の中に建物が現れた。高橋邦弘の蕎麦屋「翁」だった。数年前に山梨の山間に引っ込んだあの「翁」だった。
 高橋邦弘は基本、楓の木で作った麺棒で自分で打って自分で切る。打ち方があって細く切れる。つるっと入る江戸前にこだわるから細く切る。12月15日64鉢、16日当日45鉢、一鉢20枚だから締めて2810枚。二日間ばかりは勿論全国から弟子が集合して助けが入いる。でも死ぬ気が見える人。一人三枚のせいろ蕎麦と前菜と吟醸一合で三千円。

三千円で至福が買えるものか?
『ハッシャ・バイ』を歌ってやろうか、安倍晋三! 




 
 




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