第250話 <能>と言える日本人になってみろ(16.04.13)
第249話 風雪、一枚の筵で耐えている(16.03.13)
第248話 引退したひとりの舞姫、ひとりの歌姫(16.02.13)
第247話 ピアソラと同じ石畳を歩いてスタジオに入った(16.01.05)
第246話 青森県三戸郡田子町大字相米字上相米(15.12.04)
第245話 『港が見える丘』から戦後を眺める(15.11.04)
第244話 皆が皆、踊り念仏・空也になればいい(15.10.01)
第243話 ヒロシマの瘡蓋を剥がしてみたくて(15.09.01)
第242話 『月に吠える』と昔、詩人は言った(15.08.01)
第241話 「イチローズ・モルト」樽No.4077がやって来た(15.07.06)
第240話 旨いものは生きている内に食うべし(15.06.22)
第239話 <無銭優雅>を味あわせてくれた男(15.05.20)
第238話 向こうの人もこちらの人も、アルゴンキン・カクテルを一杯! (15.04.01)
第237話 僕が電話をかけてる場所、はもうない(15.03.01)
第236話 『ゴースト』は 戦後70年の川を渡る。(15.02.28)
第235話 <羊が人間を喰らう>という新年を迎えて(15.01.25)
第234話 不易流行の街に棲んで四十八年経った (15.01.09)
第233話 『土の歌』を広島から発信する (15.01.09)
第232話 『不在証明』の共犯者に拍手はいらない (15.01.09)
第231話 奇病・ゆうれい病でわが身を思い知ること (15.01.09)
第230話 ふたつの物語りの、幕がひらかれるのだ (15.01.09)
第229話 “ラ・ネグラ/褐色の女”が讃えた『人生よありがとう』 (15.01.09)
第228話 妖術使いの蛙の歌が聞こえてくるよ (15.01.09)
第227話 中国女の尻追っかけて15年 (15.01.09)
第226話 〈ポポロッカを起こせ!〉、と言うと不謹慎になるのかな (15.01.09)
第225話 音楽家として<黒雨>、書家として<如水>と雅号した人よ。(14.03.01)
第224話 『麦打ち唄』の音曲をどう祝祭すれば良いのだろうか!(14.02.03)
第223話 蕎麦を巡る旅と『ハッシャ・バイ』(14.01.06)
第222話 『浜辺のソプラノ』も昭和歌謡山脈の夢の途中(13.12.01)
第221話 『花巻農学校精神歌』と『ヨイトマケの歌』を繋ぐ知恵の輪(13.11.01)
第220話 <時代>に生きてしまったら、もう変われない。(13.10.01)
第219話 原爆忌・昭和二十年生まれなり(13.09.01)
第218話 『人間の秘密』はつらい夜を過ごすために(13.08.08)
第217話 逢魔が時は夕方とは限らない(13.07.08)
第216話 花や鳥や風や月は謳い、では人は何を詠うのか(13.06.04)
第215話 『最後のニュース』のあなたとあなたとあなた(13.05.04)
第214話 西行に倣い、桜に葬られて(13.04.04)
第213話 『BEETLE』は止まり場を求めて(13.03.04)
第212話 2008年は「春のめざめ」だった(13.02.18)
第211話 『音戸の舟歌』で巳年を迎える(13.01.08)
第210話 歳末に<引かれもん小唄>を歌いたくはないが。(12.12.12)
第209話 『平家物語』の舞台は東北だった(12.11.12)
第208話 “宮さん、宮さん”を今さら歌えといわれても(12.10.12)
第207話 『朗読とジャズのシモキタ・ジャンクション』の馴れ初め(12.9.12)
第206話 今年の『シモキタヴォイス』も始まりは2007年だった(12.8.8)
第205話 昭和の歌『月がとっても青いから』>(12.7.8)
第204話 雨中行軍する<ライカで下北沢>(12.6.8)
第203話 「ザ・クレードル」のまぼろしを巡りながら(12.5.10)
第202話 『SONG NEVER SANG』を、今一度響かせたい(12.4.12)
第201話 人間の第七官に響くやうな詩を書いてやりませう。(12.3.27)
第200話 しみったれたノスタルジーから『あゆむ街』へ=『ウイ・インシスト!』(12.2.20)
第199話 瀬戸内に揺れる<邯鄲の夢>か『音戸の舟歌』(12.1.19)
第198話 蠅男は『紙風船』と朝日の中に昇天する(11.12.16)
第197話 キジムナ又はラッコと『あのころ』(11.11.16)
第196話 あの夜が今よみがえる『YUSAKU MUSIC NOTE』(11.10.12)
第195話 人の縁も軽口も、人生は『ブーメランのように』(11.9.9)
第194話 敗北した時は『見上げてごらん夜の星を』(11.8.10)
第193話 東京でいつか観た<ナシ族歌舞>と<東巴文字>(11.7.19)
第192話 『想いの届く日』をレコーディングしていた頃(11.6.10)
第191話 巨人の『怪談・牡丹灯籠』を下北沢で続ける(11.5.11)
第190話 『原爆許すまじ』の歌、歌えますか?(11.3.30)
第189話 聞こえるや、『十九の春』のうめき声。(11.3.30)
第188話 『般若心経』をゴラン高原に響かせてみたい(11.1.10)
第187話 満月を盃にくだきて、暫し、酔ひて勢えよ(11.1.10)
第186話 『ふるさと 』の青森に<木鶏>を尋ねる(10.12.3)
第185話 『言うなかれ、君よ、別れを』と言って、人は逝くのか(10.11.15)
第184話 <ヴァーチカル・ドラム>にシモキタが一ミリ動いた。(10.10.3)
第183話 あの頃『アムトラック・ブルース』が流れていたよ。(10.9.3)
第182話 「無悟」と「無垢」の違いが判らない。(10.8.3)
第181話 『夜のカフカ』のシナップス(10.7.3)
第180話 魑魅魍魎を哲学すると(10.5.15)
第179話 FLANEUR(ブラブラ歩き)は止まらない(10.4.30)
第178話 チンドン音楽の出番ですよ(10.4.12)
第177話 小判で面張る今様下北沢(10.3.5)
第176話 『茶々&ちび〜三角橋の猫の歌』流れる街をどうしようと?(10.2.10)
第175話 シューベルトの『あすなろ』を歌えと言われてみても(09.12.25)
第174話 日本人の笑顔と風のインプロビゼーション(09.12.25)
第173話 「世界はときどき美しい」と思いたい。 (09.10.6)
第172話 『雨が空から降れば』しょうがない不条理 (09.9.3)
第171話 『浅い眠り』の街下北沢にて候。(09.8.12)
第170話 『ラストワルツ』を踊り続けたいのだけれど(09.7.3)
第169話 「上海帰りのリル」はピカレスクの匂い(09.6.5)
第168話 『明日という字は明るい日と書く』のですか?(09.5.7)
第167話 「ヤマテピアノ」は旅の空を飛ぶ(09.4.3)
第166話 ジャンゴを聞きながら大分を巡る(09.3.7)
第165話 大川に紅涙流れて(09.1.30)
第164話 あなごは旨いが、逃した「明日の神話」はでかい(09.1.13)
第163話 『恨五百年』の音を幻聴する(08.12.4)
第162話 『椿姫・前奏曲』は春の訪れ悲恋の訪れ (08.11.10)
第161話 水の惑星で聞きたかった『セイレーン』の歌 (08.10.8)
第160話 『シネマアートン下北沢』の鳴動 (08.9.9)
第159話 三千世界の鴉を殺し 主と朝寝がしてみたい (08.8.1)
第158話 『いつかギラギラする日』にラスト・ダンスを (08.7.8)
第157話 今様『梁塵秘抄』に戯れて (08.5.2)
第156話 シモキタに江戸前の風が未だ吹いている。 (08.4.4)
第155話 『如露亦如雷』の響、海峡を渡る。 (08.3.1)
第154話 街のすきま風をジャズが塞いだ時代があった (08.2.8)
第153話 英哲の『若沖』で年は越してはみたが (07.12.28)
第152話 『さくらんぼの実る頃』は愛の悲しみ (07.12.11)
第151話 下北沢に『不死身の花』が咲くころ (07.11.05)
第150話 映画よ あれがシモキタの灯だ (07.10.15)
第149話 「ロンリー・ウーマン」はトリガーに指を掛けた (07.09.04)
第148話 P.グラスの鉱物的ミニマル交感 (07.08.03)
第147話 今から『風をあつめて』おくために (07.07.03)
第146話 『MASAЯA SCOPE』は土空火水を駆ける (07.06.02)
第145話 『ゲンズブール委員会』への招待状 (07.05.08)
第144話 CAVA BIEN?『MASARA』 (07.04.05)
第143話 ボリス・ヴィアン気取りの『北京の秋』から始まる (07.03.08)
第142話 〈美しい国〉から『七福神の歌』が聞こえる (07.02.01)
第141話 『井戸の茶碗』なる地縁血縁 (07.01.05)
第140話 歌っとくれよ「ゴンドラの唄」を (06.12.05)
第139話 正調『満月の夕』が浸みた。 (06.11.01)
第138話 沖縄―アイヌを結ぶ『シンクロニシティ』 (06.10.10)
第137話 『八月の種』の種撒き唄を歌って (06.08.31)
第136話 「檸檬」と『セントジェームス病院』と (06.08.02)
第135話 『諷誦文』の唱導をいつか聴く日 (06.07.13)
第134話 K・D・ラングの『カウガール・ブルース』 (06.06.15)
第133話 『国境の南』ーバハカリフォルニア (06.05.16)
第132話 朝日の中 下北『かもめ』は翔ぶ (06.04.13)
第131話 伝播する『花心』の基礎体温 (06.03.09)
第130話 『吾唯知足』の教えに行雲流水する (06.02.01)
第129話 新年を繋ぐ交感神経作用 (06.01.06)
第128話 『アルフェンティーナ』の月ヶ瀬幻視行 (05.12.05)
第127話 ミドリブタと歩く街流れる歌 (05.11.02)
第126話 昭和を記憶する『夢であいましょう』 (05.10.01)
第125話 『禁断の果実』を求めてジャズの茨の道へ (05.09.06)
第124話 色即是空と『グラナダ』食い合わせ (05.09.06)
第123話 『ラプソディ・イン・ブルー』の不意打ち、『草原情歌』の余韻 (05.07.05)
第122話 『何日君再来』を君と聴く日 (05.06.03)
第121話 『般若心経』を教科書で読む日 (05.05.10)
第120話 下北ノイズの生まれる街で (05.04.01)
第119話 『ホエン・アイ・ワズ・ヤング』は今歌えない (05.03.04)
第118話 ヴェトナム人が見る『ジョージア』の夢 (05.02.01)
第117話 『ゴジラ』の年からヒロシマの年へ (05.01.01)
過去コンテンツも徐々に掲載します。


大木雄高 おおきゆたか
1945年生まれ。大学時代から小劇団を組織し、60〜70年代の同時代演劇を、作・演出・役者として手がける。78年以降は定期ライブのほか、「下北沢音楽祭」、「松田優作追悼コンサート」等をプロデュース。下北沢"LADY JANE"オーナー。"音曲祝祭行"は"音曲祝祭考"としてアサヒグラフ誌に98年1月から6月まで計24回を連載していたものを、連載終了を期に装いも新たに自主制作版とWEB版で復活させたもの。



 

"音曲祝祭行"は下北沢"LADY JANE"にて月1回部数限定で発行しています。
 
 去年の12月に表参道の銕仙会能楽研究所で能『蝉丸』があった。三年振りだろうか、能は積極的に観たいとは思わないその理由に眠くなるからというのがある。だがこの出し物は眠くならなかった。筋が分かり易かったからだ。醍醐天皇(延喜帝)の第四子蝉丸は、盲目で生まれたため、侍臣の清貫に命じて逢坂山に剃髪され捨てられるが、姉の逆髪が狂乱の果てに逢坂山まで彷徨い来る再会と別れの後、身の境遇を琵琶に託して見事な音色を奏でる琵琶法師になっていく話しだ。元々は『逆髪』とも題していたくらいで、生まれながらに髪が逆立っていた姉の狂女がシテで、蝉丸がツレ(ワキは臣下の清貫)のはずなのだが、この時は蝉丸もシテだった。歌人としての蝉丸の〈これやこの 行くも帰るも分かれては 知るも知らぬも逢坂の関〉が「小倉百人一首」にあるが、蝉丸自体は不詳、能の作者も不明の世阿弥時代の古い作品だ。
 脱線すると、同じ「小倉百人一首」の〈あらざらむ この世のほかの思い出に 今ひとたびの逢うこともがな〉を詠んだ才色兼備の和泉式部に、〈越えもせむ 越さずもあらん逢坂の 関守ならぬ人なとがめそ〉がある。藤原道長が恋愛を繰り返す彼女の扇に、〈うかれ女の扇〉と書いたことへの返歌だったが、時の権力者道長も惚れるくらい男好きの式部だったに違いない。ともかく、当時は都のはずれ逢坂の関の東は、世界を分ける険しさの悪所だったのだ。
 京女の和泉式部なら、東男の在原業平が住むずっと東に行けば、『隅田川』という演目がある。京の北白川に住んでいたが、愛する息子を人身売買人に攫われて、狂女となって隅田川にやってきて船頭とやり取りする〈梅若伝説〉の話しだ。やがて去年死んだ子の怨霊が姿を現すのだが、錯乱する女が目にするのは、草茫茫の塚だけだった。
 又、『天鼓』という演目は、後漢の昔、男の子に天鼓と名付けたら、やがて本当に鼓が降ってきて妙なる調べが評判を呼んだ。それを知った皇帝は召し上げんとしたが、献上を拒否した天鼓は殺されて呂水に沈められる。宮殿に取り上げられた鼓は一向に鳴らないので、父王伯が呼び出される。死を覚悟した父を助けようと、霊魂となって表われた天鼓のお陰で妙なる音が戻ると、皇帝は感動の涙を流して反省して、恩賞を与え天鼓を厚く弔うというお話だ。
「世阿弥によって大成された複式夢幻能のシテがほとんど怨霊であることを考えれば、怨霊鎮魂の演劇という正確が強い」と梅原猛が言うように、その先例として、聖徳太子が、天下に禍いがあったときに、六十六番の物真似を作らせて、紫宸殿で演じさせたら天下は治まり、国は静かになったという。先の狂女や狂男の如く、舞台に招き入れられ怨霊鎮魂して世の平穏を勤めるのが、元々渡来の申楽や能楽の役目だったようだ。武家や貴族とともに世の中を支配していた仏教や、または生き物と信じられていた怨霊と結びつけられていた頃の話しなので、残念ながら今は昔というしかないが、前世、現世、来世にわたって死を繰り返すのが我ら〈輪廻転生〉の身の上ならば、いまだに続いている現代仏教や現代能に、
善因善果、悪因悪果の応報をもたらす
念力法力が果たしてあるのだろうか?

 4月2日、相模原の臨済宗常福寺で今年も「死を想え・メメントモリ」という催しを終えた。〈生ずるも滅するもすべて縁起に依存する〉と思って、企画の俺は手伝いをしているが、お招きした講演者の一人養老孟司は「脳科学者だからこの歳を分かっている。僕は今から寝ますでなくて死にますといって寝るんです。すると翌朝起きると生きていて、妻に迷惑かけずにすんだと思う。これを繰り返す」といって笑いを取ってさすがだが、若輩者の俺には到底出来ない技だ。
 4月10日、「世界で一番貧しい大統領」だったウルグアイ前大統領のホセ・ムヒカが、広島の原爆資料館を見学後、「地球上で人間だけが同じ過ちを繰り返す」と芳名録に記した翌日に、先進七カ国外相(G7)がやって来て、共同宣言から「非人間的な核および核開発」の言葉を排除した。熊本地震下、川内原発は稼働され、神社では憲法改正の署名運動があり、パナマ文書が出ようが政府は「脱法」に頬かむり、安倍晋三は米海軍空母の甲板を颯爽と歩き、戦闘機に乗り込んだ自慢顔をネットに上げてはしゃいでいる。そんな首相に送り込まれたNHK会長籾井勝人は、NHKのOBたちが立ち上げた十万人に昇る即刻罷免要求署名にも関わらず、小便を浴びっ放しのカエル状態だ。そして四月各局のメーン・キャスターの入れ替わりが行われた。そんなこんなが世間を席巻して俺の頭に入り込んで、逆立ちしても酒を浴びても出て行かない。
されば、今清明を呼び出して、
生霊死霊一堂会した怨念の〈今能〉をやるしかない! 


 

 
 




このHPに関するご意見、ご感想、ご連絡はこちらからどうぞ。