第252話 夏はきぬ。またあの夏はきぬ(16.06.13)
第251話 歴史の資料館は十分も有れば済むのか(16.05.13)
第250話 <能>と言える日本人になってみろ(16.04.13)
第249話 風雪、一枚の筵で耐えている(16.03.13)
第248話 引退したひとりの舞姫、ひとりの歌姫(16.02.13)
第247話 ピアソラと同じ石畳を歩いてスタジオに入った(16.01.05)
第246話 青森県三戸郡田子町大字相米字上相米(15.12.04)
第245話 『港が見える丘』から戦後を眺める(15.11.04)
第244話 皆が皆、踊り念仏・空也になればいい(15.10.01)
第243話 ヒロシマの瘡蓋を剥がしてみたくて(15.09.01)
第242話 『月に吠える』と昔、詩人は言った(15.08.01)
第241話 「イチローズ・モルト」樽No.4077がやって来た(15.07.06)
第240話 旨いものは生きている内に食うべし(15.06.22)
第239話 <無銭優雅>を味あわせてくれた男(15.05.20)
第238話 向こうの人もこちらの人も、アルゴンキン・カクテルを一杯! (15.04.01)
第237話 僕が電話をかけてる場所、はもうない(15.03.01)
第236話 『ゴースト』は 戦後70年の川を渡る。(15.02.28)
第235話 <羊が人間を喰らう>という新年を迎えて(15.01.25)
第234話 不易流行の街に棲んで四十八年経った (15.01.09)
第233話 『土の歌』を広島から発信する (15.01.09)
第232話 『不在証明』の共犯者に拍手はいらない (15.01.09)
第231話 奇病・ゆうれい病でわが身を思い知ること (15.01.09)
第230話 ふたつの物語りの、幕がひらかれるのだ (15.01.09)
第229話 “ラ・ネグラ/褐色の女”が讃えた『人生よありがとう』 (15.01.09)
第228話 妖術使いの蛙の歌が聞こえてくるよ (15.01.09)
第227話 中国女の尻追っかけて15年 (15.01.09)
第226話 〈ポポロッカを起こせ!〉、と言うと不謹慎になるのかな (15.01.09)
第225話 音楽家として<黒雨>、書家として<如水>と雅号した人よ。(14.03.01)
第224話 『麦打ち唄』の音曲をどう祝祭すれば良いのだろうか!(14.02.03)
第223話 蕎麦を巡る旅と『ハッシャ・バイ』(14.01.06)
第222話 『浜辺のソプラノ』も昭和歌謡山脈の夢の途中(13.12.01)
第221話 『花巻農学校精神歌』と『ヨイトマケの歌』を繋ぐ知恵の輪(13.11.01)
第220話 <時代>に生きてしまったら、もう変われない。(13.10.01)
第219話 原爆忌・昭和二十年生まれなり(13.09.01)
第218話 『人間の秘密』はつらい夜を過ごすために(13.08.08)
第217話 逢魔が時は夕方とは限らない(13.07.08)
第216話 花や鳥や風や月は謳い、では人は何を詠うのか(13.06.04)
第215話 『最後のニュース』のあなたとあなたとあなた(13.05.04)
第214話 西行に倣い、桜に葬られて(13.04.04)
第213話 『BEETLE』は止まり場を求めて(13.03.04)
第212話 2008年は「春のめざめ」だった(13.02.18)
第211話 『音戸の舟歌』で巳年を迎える(13.01.08)
第210話 歳末に<引かれもん小唄>を歌いたくはないが。(12.12.12)
第209話 『平家物語』の舞台は東北だった(12.11.12)
第208話 “宮さん、宮さん”を今さら歌えといわれても(12.10.12)
第207話 『朗読とジャズのシモキタ・ジャンクション』の馴れ初め(12.9.12)
第206話 今年の『シモキタヴォイス』も始まりは2007年だった(12.8.8)
第205話 昭和の歌『月がとっても青いから』>(12.7.8)
第204話 雨中行軍する<ライカで下北沢>(12.6.8)
第203話 「ザ・クレードル」のまぼろしを巡りながら(12.5.10)
第202話 『SONG NEVER SANG』を、今一度響かせたい(12.4.12)
第201話 人間の第七官に響くやうな詩を書いてやりませう。(12.3.27)
第200話 しみったれたノスタルジーから『あゆむ街』へ=『ウイ・インシスト!』(12.2.20)
第199話 瀬戸内に揺れる<邯鄲の夢>か『音戸の舟歌』(12.1.19)
第198話 蠅男は『紙風船』と朝日の中に昇天する(11.12.16)
第197話 キジムナ又はラッコと『あのころ』(11.11.16)
第196話 あの夜が今よみがえる『YUSAKU MUSIC NOTE』(11.10.12)
第195話 人の縁も軽口も、人生は『ブーメランのように』(11.9.9)
第194話 敗北した時は『見上げてごらん夜の星を』(11.8.10)
第193話 東京でいつか観た<ナシ族歌舞>と<東巴文字>(11.7.19)
第192話 『想いの届く日』をレコーディングしていた頃(11.6.10)
第191話 巨人の『怪談・牡丹灯籠』を下北沢で続ける(11.5.11)
第190話 『原爆許すまじ』の歌、歌えますか?(11.3.30)
第189話 聞こえるや、『十九の春』のうめき声。(11.3.30)
第188話 『般若心経』をゴラン高原に響かせてみたい(11.1.10)
第187話 満月を盃にくだきて、暫し、酔ひて勢えよ(11.1.10)
第186話 『ふるさと 』の青森に<木鶏>を尋ねる(10.12.3)
第185話 『言うなかれ、君よ、別れを』と言って、人は逝くのか(10.11.15)
第184話 <ヴァーチカル・ドラム>にシモキタが一ミリ動いた。(10.10.3)
第183話 あの頃『アムトラック・ブルース』が流れていたよ。(10.9.3)
第182話 「無悟」と「無垢」の違いが判らない。(10.8.3)
第181話 『夜のカフカ』のシナップス(10.7.3)
第180話 魑魅魍魎を哲学すると(10.5.15)
第179話 FLANEUR(ブラブラ歩き)は止まらない(10.4.30)
第178話 チンドン音楽の出番ですよ(10.4.12)
第177話 小判で面張る今様下北沢(10.3.5)
第176話 『茶々&ちび〜三角橋の猫の歌』流れる街をどうしようと?(10.2.10)
第175話 シューベルトの『あすなろ』を歌えと言われてみても(09.12.25)
第174話 日本人の笑顔と風のインプロビゼーション(09.12.25)
第173話 「世界はときどき美しい」と思いたい。 (09.10.6)
第172話 『雨が空から降れば』しょうがない不条理 (09.9.3)
第171話 『浅い眠り』の街下北沢にて候。(09.8.12)
第170話 『ラストワルツ』を踊り続けたいのだけれど(09.7.3)
第169話 「上海帰りのリル」はピカレスクの匂い(09.6.5)
第168話 『明日という字は明るい日と書く』のですか?(09.5.7)
第167話 「ヤマテピアノ」は旅の空を飛ぶ(09.4.3)
第166話 ジャンゴを聞きながら大分を巡る(09.3.7)
第165話 大川に紅涙流れて(09.1.30)
第164話 あなごは旨いが、逃した「明日の神話」はでかい(09.1.13)
第163話 『恨五百年』の音を幻聴する(08.12.4)
第162話 『椿姫・前奏曲』は春の訪れ悲恋の訪れ (08.11.10)
第161話 水の惑星で聞きたかった『セイレーン』の歌 (08.10.8)
第160話 『シネマアートン下北沢』の鳴動 (08.9.9)
第159話 三千世界の鴉を殺し 主と朝寝がしてみたい (08.8.1)
第158話 『いつかギラギラする日』にラスト・ダンスを (08.7.8)
第157話 今様『梁塵秘抄』に戯れて (08.5.2)
第156話 シモキタに江戸前の風が未だ吹いている。 (08.4.4)
第155話 『如露亦如雷』の響、海峡を渡る。 (08.3.1)
第154話 街のすきま風をジャズが塞いだ時代があった (08.2.8)
第153話 英哲の『若沖』で年は越してはみたが (07.12.28)
第152話 『さくらんぼの実る頃』は愛の悲しみ (07.12.11)
第151話 下北沢に『不死身の花』が咲くころ (07.11.05)
第150話 映画よ あれがシモキタの灯だ (07.10.15)
第149話 「ロンリー・ウーマン」はトリガーに指を掛けた (07.09.04)
第148話 P.グラスの鉱物的ミニマル交感 (07.08.03)
第147話 今から『風をあつめて』おくために (07.07.03)
第146話 『MASAЯA SCOPE』は土空火水を駆ける (07.06.02)
第145話 『ゲンズブール委員会』への招待状 (07.05.08)
第144話 CAVA BIEN?『MASARA』 (07.04.05)
第143話 ボリス・ヴィアン気取りの『北京の秋』から始まる (07.03.08)
第142話 〈美しい国〉から『七福神の歌』が聞こえる (07.02.01)
第141話 『井戸の茶碗』なる地縁血縁 (07.01.05)
第140話 歌っとくれよ「ゴンドラの唄」を (06.12.05)
第139話 正調『満月の夕』が浸みた。 (06.11.01)
第138話 沖縄―アイヌを結ぶ『シンクロニシティ』 (06.10.10)
第137話 『八月の種』の種撒き唄を歌って (06.08.31)
第136話 「檸檬」と『セントジェームス病院』と (06.08.02)
第135話 『諷誦文』の唱導をいつか聴く日 (06.07.13)
第134話 K・D・ラングの『カウガール・ブルース』 (06.06.15)
第133話 『国境の南』ーバハカリフォルニア (06.05.16)
第132話 朝日の中 下北『かもめ』は翔ぶ (06.04.13)
第131話 伝播する『花心』の基礎体温 (06.03.09)
第130話 『吾唯知足』の教えに行雲流水する (06.02.01)
第129話 新年を繋ぐ交感神経作用 (06.01.06)
第128話 『アルフェンティーナ』の月ヶ瀬幻視行 (05.12.05)
第127話 ミドリブタと歩く街流れる歌 (05.11.02)
第126話 昭和を記憶する『夢であいましょう』 (05.10.01)
第125話 『禁断の果実』を求めてジャズの茨の道へ (05.09.06)
第124話 色即是空と『グラナダ』食い合わせ (05.09.06)
第123話 『ラプソディ・イン・ブルー』の不意打ち、『草原情歌』の余韻 (05.07.05)
第122話 『何日君再来』を君と聴く日 (05.06.03)
第121話 『般若心経』を教科書で読む日 (05.05.10)
第120話 下北ノイズの生まれる街で (05.04.01)
第119話 『ホエン・アイ・ワズ・ヤング』は今歌えない (05.03.04)
第118話 ヴェトナム人が見る『ジョージア』の夢 (05.02.01)
第117話 『ゴジラ』の年からヒロシマの年へ (05.01.01)
過去コンテンツも徐々に掲載します。


大木雄高 おおきゆたか
1945年生まれ。大学時代から小劇団を組織し、60〜70年代の同時代演劇を、作・演出・役者として手がける。78年以降は定期ライブのほか、「下北沢音楽祭」、「松田優作追悼コンサート」等をプロデュース。下北沢"LADY JANE"オーナー。"音曲祝祭行"は"音曲祝祭考"としてアサヒグラフ誌に98年1月から6月まで計24回を連載していたものを、連載終了を期に装いも新たに自主制作版とWEB版で復活させたもの。



 

"音曲祝祭行"は下北沢"LADY JANE"にて月1回部数限定で発行しています。
 
 日本の産業経済を確立した基幹に生糸産業が上げられるが、冨岡製糸場が世界遺産になろうとも、東京農業大学バイオセラピーの元宮田正信助教授が山形に出掛けて、「養蚕業の終焉期」に立ち会い、「桑の枝を刈り、繭の出荷を手伝ったりした」その昔に触れて、「せめてもと考えてクワの実でジャムやリキュールを作り、機能性豊かなクワの葉を食べる工夫をしている」と、世田谷の小冊子に書いていた。20年前から、金柑、果林、クコ、ブルーベリーなどの果実酒を自家製しているが、桑の実は作ったことが無くてたちまち手に入れたくなった。葉っぱをあれほど激しく食べる蚕から美しい絹糸を紡ぎ出すのだから、どんな美味の果実酒ができるのだろうかという想いだ。桑の花が淡黄色に咲くのは四〜五月だから、赤黒く実が熟すのは今頃に違いない。
 桑の実には会わなかったが、5月30、31日、リュート奏者の高本一郎のコンサートで、一大生糸産業を支えていた長野の上田と軽井沢に行って来た。前夜の会場だった信州国際音楽村から車で送ってもらうと、田畑に覆われた山里の道を30分行くと、三重塔が聳える前山寺という寺の側に信濃デッサン館と数距離に「無言館」はあった。「信濃デッサン館」は1979年、窪島誠一郎が建てた素描コレクションの美術館だが、選ばれた画家たちは〈夭折の画家〉ばかりで、画壇の主流からはずれた人たちばかりだった。とは言え村山槐多が見れるという予備知識だけだった。
 明治29(1896)年生れの村山槐多は、京都府立一中を卒業した十八歳の時、家出同然で信州の伯父を訪ね、東京に出るまで千曲川風景などスケッチしているうちに、信州の自然に魅せられていったようだ。大正リベラリズムに育ち早熟だった槐多は中学の時、人を好きになるのに男女の区別はないと、「美しいあなたにこんな手紙が書けるのかと思うと嬉しくて耐らない。・・・」とラブレターを何通も送り、一級下の少年、『稲生像』を水彩で描いた。そして信州風景の数々の木版画デッサンの素朴な心情。東京に出てからも白秋や杢太郎と交流していた従兄の山本鼎が名付けたように、悍馬であり癇の強さは『尿する裸像』の赤裸々な血の色のガランスだった。槐多は『一本のガランス』という自分にアジテートする詩を書いている。今年の5月15日まで皇居の東京国立近代美術館で公開していた『バラと少女』になると、そのガランスは少女の頬と夕焼けを染め、背景のバラの花が風になびかれ咲き乱れている。そこには〈性と生〉の高まりの押さえようもなく、白い歯を出した口は性器を連想させる。
21歳の槐多、もし会っていたら
絶対に嫌いになっていた早熟青年だった。

 デッサン館の奥に歩を進めると、まさかあったのか! 松本竣介が追い討ちをかけた。窪島誠一郎は1973年に既に「松本竣介遺作展」をやった人だと恥じらいつつ知った。『少女』は淡く色付けされ、『ニコライ堂』のデッサンは三年前を思い出させた。2013年1月14日まで世田谷美術館で『生誕百年 松本竣介展』をやっていた。赤くまたは青肌色に染まった『ニコライ聖堂』の連作は、成瀬巳喜男の映画『稲妻』や学生時代を甦らせた。戦災を生き残ったニコライ堂はお茶の水のシンボルだったが、松本竣介の絵は暗澹と静謐で、『Y市の橋』も『議事堂のある風景』も壊れているような、その中に自己を小さく点描していて、自画像の『立てる像』ともども、戦時下の悪夢をくぐった寂寥の孤塁を守る〈生きる魂〉が恐いほどだった。
『笛吹き』の吉岡憲もいた。当時所有していた仙台ホテルに、絵を見るだけで何回も出掛けて行った窪島誠一郎が、ホテルが廃業になり行方知れずになった『笛吹き』を、どうして「デッサン館」に入手したのかもミステリーのような面白い話だ。
「デッサン館」を出ると「無言館」は何処なのだ。いや、紙面がないのに一九九七年に隣接地に設立した「無言館」の話にやっと辿り着いた。第二次世界大戦で兵役に取られ戦没した志半ばの画学生の絵を展示している「無言館」は、だから堪らなくなる。「原爆資料館」も堪らないが「無言館」は叫びが無いほど堪らない。数日後、「無言館」を訪ねた友人が居た。歌手のおおたか静流とデザイナーのヤマシン(「祝祭行」のデザイナー)に聞けば、「『無言館』のCDを作ることになったので、撮影と打ち合わせに行ってきた。大木さんがつい数日前に来たと、窪島さんが言ってたよ」という答えだった。
偶然も偶然、〈無言の鏡〉に入り込んだ
アリス同士だったとしておこう。

“戦後54年を経た1999年夏、 「無言館」の一枚の絵の前に一人の老婦人が立った。
「安典さん、今日初めて、貴方が二十歳の私を描いてくれた絵に会いにきました」
『あの夏のまま・・・』 歌:おおたか静流・朗読:窪島誠一郎 2016年8月15日発売。   
 

 
 




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